漢検1級 27-③に向けて その50  文章題訓練㉑

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<「漢字の学習の大禁忌は作輟なり」・・・「作輟(サクテツ)」:やったりやらなかったりすること・・・>

<漢検1級 27-③に向けて その50>
●福沢諭吉の「日本男子論」から・・・。
●今回も前回ほどではないが、ちょっと難度ありと思われる・・・80%(24点)以上が目標か・・・。

●文章題㉑:次の文章中の傍線(1~10)のカタカナを漢字に直し、傍線(ア~コ)の漢字の読みをひらがなで記せ。(30) 書き2×10 読み1×10

「日本男子論」(福沢諭吉)

「明治十八年夏の頃、『時事新報』に「日本婦人論」と題して、婦人の身は男子と同等たるべし、夫婦家に居て、男子のみ独り快楽を専らにし独り威張るべきにあらず云々の旨を記して、数日の社説に掲げ、また十九年五月の『時事新報』「男女交際論」には、男女両性の間は肉交のみにあらず、別に情交の大切なるものあれば、両性の交際自由自在なるべき道理を陳べたるに、世上に反対論も少なくして(1)ヒケンの行われたるは、記者の喜ぶ所なれども、右の「婦人論」なり、また「交際論」なり、いずれも婦人の方を本にして論を立てたるものにして、今の婦人の有様を憐れみ、何とかして少しにてもその地位の高まるようにと思う一片の(2)バシンより筆を下したるが故に、その筆法は常に婦人の気を引き立つるの勢いを催して、男子の方に筆の(ア)鋒の向かわざりしは些(ち)と不都合にして、これを譬えば、ここに高きものと低きものと二様ありて、いずれも程好き中を得ざるゆえ、これを矯め直さんとして、ひたすらその低きものを助け、いかようにもしてこれを高くせんとて、ただ一方に苦心するのみにして、他の一方の高きに過ぐるものを低くせんとするの手段に力を尽さざりしものの如し。物の低きに過ぐるは固より宜しからずといえども、これを高くして高きに過ぐるに至るが如きは、むしろ初めのままに捨て置くに若ず。故に他の一方について高きものを低くせんとするの工風は随分(イ)難き事なれども、これを行のうて失策なかるべきが故に、この一編の文においては、かの男子の高き頭を取って押さえて低くし、自然に男女両性の釣合をして程好き中を得せしめんとの腹案を以て筆を立て、「日本男子論」と題したるものなり。
・・・主人の内行修まらざるがために、一家内に様々の風波を起こして家人の情を痛ましめ、以てその私徳の発達を妨げ、不孝の子を生じ、(3)フテイ不友の兄弟姉妹を作るは、固より免るべからざるの結果にして、怪しむに足らざる所なれども、ここに最も憐れむべきは、家に男尊女卑の悪習を(ウ)醸して、子孫に圧制卑屈の根性を成さしむるの一事なり。男子の不品行は既に一般の習慣となりて、人の怪しむ者なしというといえども、人類天性の本心において、自ら犯すその不品行を人間の美事として誇る者はあるべからず。否、百人は百人、千人は千人、皆これを心の底に愧じざるものなし。内心にこれを愧じて外面に(4)ゴウマンなる色を装い、(5)ライラクなるが如く無頓着なるが如くにして、強いて自ら慰むるのみなれども、俗にいわゆる疵持つ身にして、常に悠々として安心するを得ず。その家人と共に一家に(6)ミンショクして団欒たる最中にも、時として禁句に触れらるることあれば、その時の不愉快は譬えんに物なし。無心の小児が父を共にして母を異にするの理由を問い、隣家には父母二人に限りて吾が家に一父二、三母あるは如何などと、不審を起こして詰問に及ぶときは、さすが鉄面皮の(7)ダイフも答うるに辞なく、ただ黙して冷笑するか顧みて他を言うのほかなし。即ちその身の弱点にして、小児の一言、寸鉄(エ)腸を断つものなり。既にこの弱点あれば常にこれを防禦するの工風なかるべからず。その策如何というに、朝夕主人の言行を厳重正格にして、家人を視ること他人の如くし、妻妾児孫をして己れに事うること奴隷の主君におけるが如くならしめ、あたかも一家の至尊には近づくべからず、その(8)キキには触るべからず、俗にいえば殿様旦那様の御機嫌は損ずべからずとして、上下尊卑の分を明らかにし、例の内行禁句の一事に至りては、言の端にもこれをいわずして、家内、目を以てするの家風を養成すること最も必要にして、この一策は取りも直さず内行防禦の胸壁とも称すべきものなり。
・・・君子の世に処するには、自ら信じ自ら重んずる所のものなかるべからず。即ち自身の他に(オ)擢んでて他人の得て我に及ばざる所のものを恃みにするの(カ)謂にして、あるいは才学の抜群なるあり、あるいは資産の非常なるあり、皆以て身の重きを成して自信自重の(キ)資けたるべきものなれども、就中、私徳の盛んにしていわゆる(9)オクロウに恥じざるの一義は最も恃むべきものにして、能くその徳義を(ク)脩めて家内に恥ずることなく戸外に憚る所なき者は、貧富・才不才に論なく、その身の重きを知って自ら信ぜざるはなし。これを君子の身の位という。洋語にいうヂグニチーなるもの、これなり。そもそも人の私徳を脩むる者は、何故に自信自重の気象を生じて、自ら天下の高所に居るやと尋ぬるに、能く難きを忍んで他人の能くせざる所を能くするが故なり。例えば読書生が徹夜勉強すれば、その学芸の進歩如何にかかわらず、ただその勉強の一事のみを以て自ら信じ自ら重んずるに足るべし。寺の僧侶が毎朝早起、経を誦し粗衣粗食して寒暑の苦しみをも憚らざれば、その事は直ちに世の利害に関係せざるも、本人の精神は、ただその(10)カンクに当たるのみを以て凡俗を目下に見下すの気位を生ずべし。天下の人皆財を貪るその中に居て独り寡慾なるが如き、詐偽の行わるる社会に独り正直なるが如き、軽薄無情の浮世に独り深切なるが如き、いずれも皆抜群の嗜みにして、自信自重の元素たらざるはなし。如何となれば、書生の勉強、僧侶のミンショクは身体の苦痛にして、寡慾、正直、深切の如きは精神の忍耐、即ち一方よりいえばその苦痛なればなり。
・・・例えばその文の大意に嫉妬の心あるべからずというも、片落ちに婦人のみを責むればこそ不都合なれども、男女双方の心得としては争うべからざるの格言なるべし。また(ケ)姦しく多言するなかれ、(コ)漫りに外出するなかれというも、男女共にその程度を過ぐるは誉むべきことにあらず。また巫覡に迷うべからず、衣服分限に従うべし、年少きとき男子と猥れ猥れしくすべからず云々は最も可なり。・・・」
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(1)鄙見 (2)婆心 (3)不悌(「不弟」とも。兄に対して弟としての道を守らないこと) (4)傲慢 (5)磊落 (6)眠食(睡眠と食事。寝食。起居。) (7)乃父 (8)忌諱 (9)屋漏 (10)艱苦 
(ア)ほこさき (イ)かた (ウ)かも (エ)はらわた (オ)ぬき (カ)いい (キ)たす (ク)おさ (ケ)かしま (コ)みだ 
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