故事成語類(実践問題その15)

日本漢字能力検定(漢検) ブログランキングへ故事成語類(実践問題その15)です。 難易度:「やや易」
(よみ)
①結想奢華なれば、則ち見る所(転)た冷淡多し。
②冥心清素なれば、則ち渉る所、(都)て塵氛(じんぷん)を厭う。
③予れ乃(なんじ)の徳を懋(さかん)なりとし、乃(なんじ)の丕績(ひせき)を喜(よみ)し、天の歴数は汝の躬に在り、汝じ終に元后に陟れ。
人心は惟れ危く、道心は惟れ微なり、惟れ精に惟れ一、允(まこと)に(厥)の中を執れ。
④眉睫(びしょう)(纔)かに交はらば、夢裏便ち張主(ちょうしゅ)すること能はず。眼光地に落つれば、死去又た安んぞ分明なるを得んや。
⑤今箇(こ)の知行合一の説は、正に是の病に対する薬なり。又た是れ某が(鑿空)杜撰ならず。知行の本体は、原(も)と是れ此の如し。

(かき)
①美人有り、名は虞。常に幸せられ従う。駿馬あり、名は騅(すい)。常に之に騎す。是に於いて項王乃ち非(悲)歌慷慨し、自ら詩を為つくりて曰く、「力は山を抜き気は世を(オオ)ふ、時に利なく騅は逝かず、騅の逝かざる奈何すべき、虞や虞、若じを奈何せん」と。
②平地坦途、車、豈に蹶くこと無からんや。巨浪(コウトウ)、舟も亦た渡るべし。事無きを料れば必ず事有り、事有りを恐るれば、必ず事無し。
③金帛(きんぱく)多ければ、只だ是れ(スイシ)の時、子孫の眼(まなこ)に涙少なきを博し得て、其の他を知らず、争ふ有るを知るのみ。金帛少なければ、只だ是れ(スイシ)の時、子孫の眼に涙多きを博し得て、亦た其の他を知らず、哀しみ有るのみ。
④好んで閨門を譚(かた)り、好んで譏乱(きらん)に及ぶ者は、必ず鬼神の忌む所と為る。(キカ)有るに非ずんば、則ち必ず奇窮有り。
⑤丘山の善を積むも、尚ほ未だ君子と為さず。(シゴウ)の利を貪れば、便ち小人に陥(お)つ。
<回答・解説>はこのあとすぐ(^^)

(読み問題)
(うた):準1レベルの読み。転た、転た心、転た寝など・・・。想いを結ぶところ奢侈にして華美ならば、その見るところ全て満足せず。
(すべ):同じく準1レベルの読み。・・・心を致すところ清浄にして素朴なれば、その行うところ全て利欲を厭う。
(そ) :厥:ケツ、クツ、ま(げる)、ぬか(ずく)、そ(の)、それ  (参考)<書経>帝舜が禹に語った言葉の一部:汝の徳は天下を安んずるに足り、汝の功績は天下に讃えるに足る。そして何より天命は今、汝の元に存するのだ。禹よ、今こそ帝位に即け。人心は私を為し易く、道心は顕れ難きものである。故に精一を旨とし、道心を内に存して人心を従わせ、常に中なるを執るのだ。出典・参考・引用林英吉著「五経講義」 *この文章中の語句は、読み問題でよく出題されていますね・・・「(さかん)」「丕績(ひせき)」「天の歴数は汝の躬(み)に在り」 「允(まこと)に厥の中を執れ」など。
(わず):纔:サイ、わず(か)、わず(かに)  *音読みの熟語に「纔着(サイジャク)」というのがあります。→①装束の丈(たけ)を、着る人の身の丈と等しくすること。②束帯の下襲(したがさね)の裾を足首までの長さとしたもの。・・・故事成語類とは関係ないですが、覚えておくと良いかもしれません(^^)。文意:わずかでもまぶたを閉ずれば、夢の中に落つ。人、夢に在りては自己たるを得ず。眼光地に落つればその生を終う。生前に自己を知らず、死後にどうして自己を知らん。張主(ちょうしゅ):主張。
(さっくう):①穴を掘りうがつこと ②道路を開通すること ③根拠のない説。架空の説。ここは③の意。 (文意)私の知行合一の説は、正に斯様な病に対する薬であると云えよう。これは決して私の空言ではない。知行の本質というものは、古来より吾が知行合一の精神と同じなのだ。 *本文では語句解説で「さくくう」と書いてありましたが、回答は広辞苑所載の「さっくう」としました。

(書き問題)
(蓋):四字熟語「抜山蓋世」の語源。 この「史記・本紀(項羽本紀)」は味わい深いですね。他にも「四面楚歌」とか、虞美人草の謂れとなった虞姫のこととか出ていて楽しく読めるところです。
(洪濤):大波。巨大な浪。洪はおおきい意があり、濤はおおなみをいう。洪:中学…コウ 準1…おおみず 濤:トウ、なみ(文意)平坦な道なるとも、車の往生せざる無く、巨波大波なろうとも、舟の渡らざるは無し。事無きを図れば必ず事生じ、事有るを戒慎かいじんせば、必ず無事なるを得ん。坦途(たんと):平坦な道。でこぼこのない道。坦塗。
(垂死):(死になんなんとする意)臨終のとき。瀕死のとき。死にかかるとき。広辞苑にも載ってます。身につまされる内容ですね・・・昔も今も変わらない人間の性(さが)でしょうか・・・(^^)。念の為の文意:財産多ければ、ただこれまさに臨終の時、子孫の眼は涙を少し溜めるばかりで、その他は知らず、財産に眼を光らせ心を奪われる。財産少なければ、ただこれまさに臨終の時、子孫の眼は涙を溜めるばかりで、その他は知らず、哀しみに耽りて終う。
(奇禍):(文意)好んで内情を語り、好んで人を誹り乱す者は、必ず鬼神きしんの忌む所となる。思いがけない災いに出会わぬとしても、必ず思いがけぬところで窮するであろう。閨門(けいもん)内室の門。寝室の出入り口。宮中の小門。 *「奇貨置くべし」の「奇貨」ではありませんので注意。
(糸毫):ごくわずかなこと。(文意)丘や山に達する程の善を積むも、未だ君子と為すには足らず。糸や毛の如き僅かな利欲を貪れば、たちまち小人に落つ。

今回は準1級レベルの問題も織り交ぜましたので、若干易しかったかもしれませんね。ではまた。